大会テーマ:明日は我が身!大規模災害に備えよう!
~生コン工場のBCP(事業継続計画)~
日時:令和6年11月22日(金) 15:00~20:00
会場:徳島グランヴィリオホテル
1.基調講演
「東日本大震災を経験した東北地方の生コンクリートと新設構造物」
岩手大学 理工学部 システム創成工学科
社会基盤・環境コース教授 小山田 哲也 氏
2.パネルディスカッション
「生コンクリート業界として巨大災害を迎え撃つために」
〜過去から学び、未来につなげる〜
(ファシリテーター)
徳島大学大学院 環境防災研究センター
講師 湯浅 恭史 氏
(パネラー)
岩手大学 教授 小山田 哲也 氏
釜石レミコン株式会社 川村 氏
光洋機械産業株式会社 高井 氏
徳島県生コンクリート工業組合 青年部 横手 氏
令和6年元日に能登半島地震がありました。
これは決して他人事ではなく、南海トラフ巨大地震は過去の統計から周期的に必ず発生することが分かっています。その発生確率は今後10~30年で、70~80%にまで高まっています。
また近年、地震だけでなく、大型台風、線状降水帯豪雨による洪水や土砂崩れなどの大規模災害が続いているなかで、生コン業界として、どのように取り組んでいくべきかを探るべく、本テーマを選択しました。
1.基調公演
本大会では、東日本大震災での生コン工場の対応について調査され、また復興工事においては新設構造物の品質・耐久性確保にご尽力されました岩手大学の小山田先生にご講演いただきました。
・構造物への地震被害の特徴、生コン工場の被災概要と復旧状況、生コンの需要推移。
・需要激増への対応として、材料供給元の変更や、仮設・国直轄プラントの建設。
・発注者間の競合を調整するために、国交省や県が連絡会を発足。
復興工事では、短期間かつ数多くの構造物が施工されるが、同時に劣化してしまうと維持が困難になるという問題意識より、現状把握と改善対策の試行錯誤を行い、品質・耐久性の確保への取り込みがなされた。
・山口県方式を元にした「施工状況把握チェックシート」と「表層目視強化法」によって逐次改善し、導入前後で評価点が確実に高くなる結果となった。
・追加養生することで表層透気係数がワンランクアップしており、密実性が上がること確認した。
・耐久性確保には、地域環境に合わせた取り組みをする必要があり東北地方においては、凍結防止剤の影響を受けることから、凍害区分に合わせて目標空気量を設定した。
具体的に要望し、仕上がりが良くなっていることを現場で褒めることにより現場が変わった ということが、大変印象に残りました。
2.パネルディスカッション
防災の専門家である徳島大学環境防災研究センターの湯浅先生をファシリテーターにお迎えし、震災の当事者であるパネリストから当時の状況をお聞きし、その体験談からどのような備えをすべきか、実際に災害に遭遇した後に取るべき対応などを学びました。
また、震災から13年が経過した現在までの生コン工場に起きた状況の変化についてもお伺いしました。
□徳島大学 湯浅先生
・BCP(事業継続計画)とは のご説明
・南海トラフ巨大地震被害想定
最悪の被害を想定しておく(想定外をできるだけ無くす)ことで命を守ることができる。
・復旧・復興に生コンは無くてはならないものであるとともに、ビジネスチャンスでもある。
□釜石レミコン 川村 氏
・震災被災状況、復旧復興までのご苦労。流されてきたゴミの撤去やコルゲートサイロの骨材抜き取りなど人力作業で3ヶ月を要した。
・骨材確保のための材料変更により、4年間で4回のJIS標準配合の変更
・連日の大量出荷への対応でのご苦労。需要増への対応として輸送能力増強、配車員増員、試験課増員
・震災からの教訓(まず自分の身を守る。ハザードマップを使用した従業員への避難経路の確認や連絡方法の確認をする。電子媒体での書類保存)
□光洋機械産業株式会社 高井 氏
・事前に準備すべきこととして、ユーザーID、パスワード、計量値などのパラメータデータ、配合などあらゆるデータの電子媒体でのバックアップをしておく。紙の資料は、上部階に保存しておく。
・操作盤、動力盤、コンプレッサー、キュービクル、ルーツブロアーなどは受注生産のため、中古部品を探して使用した。入手先の情報収集に努めている。また、パソコンやシーケンサーの予備機の検討、骨材をダンプ投入していない場合は、ホイールローダーの予備機が無いと出荷不能になる。
・コンプレッサー・エアータンク設置で停電時に、コンプレッサーの空気があるうちにミキサー内の生コンを手動で排出することができる(津波の心配がない場合)。また、外部配管接続可能な配管をしておくことで、コンプレッサー故障時にもリース品を繋げることができて平日修理も可能となるのでお奨め。
□岩手大学 小山田先生
・品質・耐久性向上への取り組みに際しては、まず学を引き入れ、学と官がタッグを組んで方針を決めることで、産の方々に素早い対応をして頂けた。きっかけは学と官がならないと、変えるのは難しいと今回痛感した。
また、新しい取り組みに対して、高耐久・高品質にするための予算が用意されていたことが工事業者に浸透していった大きな要因であった。
・非常時に初動の遅れが出ないようにするため、隣県の協同組合との取り決めをしておくほうが良いと思った。
・自分の工場の環境で何がハザードであるかを想定して、それについての用意をすべきである(全工場が津波対策をするのではない)。
・受け身ではなく、積極性を持って取り組む姿勢が重要である。
◆
大規模災害においては、まず輸送手段確保のための道路復旧が最初に行われ、その材料となる生コンの早期出荷は最優先事項となります。また、復興工事においては生コン出荷の激増に対応していかなければなりません。
それらは、被災した工場の復旧努力やその近隣工場だけでは実現出来ず、生コン協同組合、県の垣根を超えての協力が必要であることが本大会の参加者の中では共有できたと思います。
災害時において、至急、そして急激な復興需要に対しては、(事前準備も含めて)受け身ではなく積極性を持って、業界全体で協力体制を組み、生コンクリートの安定供給に務めることが、生コン工場におけるBCPであると認識を新たにすることができました。
3.懇親会
大会後の懇親会では、「阿波のおもてなし」をしようとのことから各県の工組青年部に、徳島県工組青年部がホスト役として付かせていただき、交流を深めました。
テーブルには、鳴門鯛、阿波尾鶏、鳴門金時、竹ちくわ、フィッシュカツなど、徳島の食材を使って華やかに彩られたオードブルが並びました。
また、阿波おどり有名連である金長連が躍り込む「お接待」が行われ、参加者が一緒に踊る微笑ましい一幕も見られました。
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